【インタビュー】第2回 ピアニスト 横山幸雄さん<後編>子どもにとって、経験は0と1で大きく違う

世界で活躍する音楽家の方にご協力をいただき、音楽への思いやご自身の音楽体験についてうかがう「みんことスペシャルインタビュー」。第2回はピアニストの横山幸雄さんです。

日本を代表するピアニスト、横山幸雄さんのインタビュー後編です。前編は、横山さんにとっての「音楽の力」についてお聞かせいただきました。後編はNPOみんなのことば の活動に触れてお話くださった横山さんの思いをご紹介します。

▼横山幸雄さんのオフィシャルサイト

▼前編はこちら

 「みんなのことば」のような体験をできる子どもたちは幸せだね

どんなに小さな子どもでも、できる限りたくさん生の音楽に触れる経験があったほうがいいと思います。素晴らしいものがいつも身近にあることはいいことでしょ。食事は食べ過ぎるとお腹をこわすけど、音楽は聴きすぎて病気になることはないですよね。できることであれば、生まれた瞬間から、ずっと24時間音楽が鳴っていても、生演奏が鳴っていても良いと思います。現実的にはありえないけど、僕はそれくらいのものだと思います。

1年に1回でも良いと思います。なにも無いところから比べれば、1回でも体験するというのは、ものすごく大きい。1と無数の違いよりも0と1の違いははるかに大きいので、とても大切なことだと思います。

横山幸雄さん

それと、音楽に関わらず、そのように「体験」を大切だと考える教育環境・家庭環境で育つ子どもたちは幸せだな、と思いますね。その中にたまたま音楽がなかったとしても、環境をつくる側の姿勢の問題はすごく大きい気がします。 だからこそ、それ以上にこういう活動をしよう、体験をさせよう、とNPOみんなのことばのように活動していることは素晴らしいと思います。 また、大人の意識が変われば、子どもに及ぼす影響はとても大きいので、大人の方にももっと音楽を楽しんでもらいたいですね。

演奏家にとっても、非常に貴重な活動

本来は、子どもたちや聴く人のための活動なのでこれは付随するものですが、演奏する側にとっても、NPOみんなのことば のような活動は非常に貴重です。

本来、ピアノにしても家に閉じこもって練習するのは、難しいところを弾けるようになるため、とみんな言うけど、それは別問題で、本当は素晴らしい音楽を人に伝えるために練習するんです。 曲は確かに難しいので、克服しないとなにもならないのだけど、それだけにみんな克服したら終わり、になってしまっています。

本当はそれを誰かに聴いてもらって、「この音楽いいよね」って表現して共有する体験が大切ですが、若い演奏家たちにはそのような機会が全然ありません。それって演奏家にとってもかわいそうなんです。だから直接的な反応をもらって、どんどん揉まれたらいいと思います。最初はみんな戸惑うと思うけど、そこを乗り越えられなかったら“演奏家”にはなれません。

他の人には欠点でも、その人がやると魅力になる、という演奏

例えば、楽譜って不完全なものです。音楽を記号化したものでしかないんです。

どの作曲家も、楽譜を書く前に溢れんばかりの音楽とメッセージ的なものがあります。それをなんとか記録するために、楽譜に置き換えざるを得ないのです。そういう見方を忘れてはいけないと思います。

楽譜の前に音楽があります。どんな人が、どんな時に、どんな気持ちのときに書いた、その「音楽」がなんだったのか、というところを読もうとすれば、ちゃんとしたものなるはずです。それは楽譜通りの演奏からそんなに外れたものではないと思いますが、そのような見方がなにもないまま楽譜を読むと、それは不完全な演奏になってしまいます。

上手な演奏と感動する演奏は全然違います。

プロになる以上、感動するけど下手ね、では困りますが、完璧な人はいないし、それに完璧だけを求めても仕方ないんです。

たぶん他の人がやると欠点になるようなことでも、その人がやると魅力になるというようなものを持っている演奏家は非常に強いと思います。 若い演奏家には、このような活動にどんどん参加してほしいと思います。 応援しています。

横山幸雄さん、お時間をいただき本当にありがとうございました!

みんなのことばは、プロの音楽家とともに、参加型クラシックプログラムを通して子どもの心を育てる活動をするNPO法人です。

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