子どもが担っている未来に、いろいろな種をまいてあげたい|【第3回】先生インタビュー 区立 沼袋保育園<後編>(東京都中野区)

長年にわたり、みんなのことばをご利用いただいている幼稚園や保育園、学校の先生方にお話をうかがう「先生インタビューシリーズ」。第3回は、区立 沼袋保育園(東京都中野区)の園長・滝瀬恭子先生をお訪ねしました。

滝瀬先生は、10年以上前からご自身がいらっしゃる区立保育園で「みんなのコンサート 助成制度」を活用して、コンサートを開催されています。

前編では、ご自身の園だけではなく、近隣の小規模保育園から私立幼稚園まで、年長さんと小学校1年生をご招待しておこなうコンサートへの思いをうかがいました。

▼前編はこちら

後編では、子どもの感性の成長のために大人ができること、コロナ禍を経た今後の取り組みについて、お話をうかがいました。

大人にできること ~子どもたちの選択肢の幅を広げる~

園長先生

子どもたちの選択肢って、黙っていたら広がらないかもしれません。

私が前にいた園のお子さんで、みんことのコンサートがきっかけで、ヴァイオリンを始めたお子さんがいます。もう成人されていますけどね。ヴァイオリンのレッスンを続けて、教室のコンサートはこれで最後なのでと呼んでいただいて、聴きに行ったことがあります。みんことのコンサートに出会ってからこういう人(アーティスト)になりたいという思いがあったのでしょうけれど、趣味としてこれからも楽しんでいきますと言っていました。

彼女は目の前で本物を聴くという経験がなかったら、自分の趣味の世界や、いずれはコンサートをやってみたいという夢とか、人生の選択肢がそこまで広がらなかったかもしれない。もしかしたら、ご結婚なさってご自身のお子さんに聴かせたりする機会が出てくるかもしれない。やっぱり子どもたちの選択肢を大人が増やしてあげることが必要なのだと強く思いました。

素敵なことですよね。このようなつながりが自然に紡がれていっていると感じていて、みんことさんには良いチャンスをいただいたと思っています。

先生からご覧になって課題だと思っていらっしゃることがありましたらお話いただけますか。

園長先生

やはりお子さんひとりひとりの環境によって、選択できるものが違うということですね。

違う環境のなかにいる子どもたちが、保育園でコンサートをしていただくことで、同じ空間で同じ嬉しさとか楽しさを味わえるというのが嬉しいですね。育ちの環境っていうのは子どもたちが選べるものではないのですけど、でも、こういうふうになりたいな、こんな素敵なこと興味があるな、という選択肢は無限にあるわけですよね。子どもたちの選ぶ幅は、大人が広げてあげられるのだろうなと考えています。子どもたちにいろいろなことを体験してほしいです。

大人の感性にも響き、次の子どもへ繋がっていく

園長先生

子どもたちはコンサートを体験したあと、砂場のスコップをチェロに見立ててヒロユキさん(ヨコミゾヒロユキ)の真似をしたり…日常生活の中の遊びのひとつになるのが、とても素敵だなと感じます

園長先生

毎回、初めて聴く職員たちもいるわけですが、来年はどうします?って、ソワソワするわけです。先生方ももう1回聴きたいとか、そういった反応も嬉しいし、楽しかったね、と共有できることが増えていったらいいと思うのです。それこそ、先生たちの感性にもちゃんと響いたんだなと認識できたのはとっても嬉しいことでした。

それだけの価値のあることをしてくださっていると、わたしはもう10年以上も思っているので、だからこそ、コロナのときであっても、どうにかならないかというご相談をさせていただきました。

コロナの期間は、やむを得ないことや苦渋の決断もありましたが、子どもたちの環境を整えるという大事な仕事を持つ大人として職場放棄にならないよう「なにができるか」という考え方を先生方にお願いしました。その先生方の協力もあり、コンサートを継続することができました。

園長先生

コロナ禍でもコンサートを継続できましたが、園長ひとりではなにもできなくて、子どもたち同様、私たち大人も、やっぱり仲間って大事だとすごく思います。力になるんですね。

心の中の思い出から、あなたもそうなの?という思いが人へのやさしさにつながったり、一緒で嬉しいねという共感が、大人になっても自分を支えてくれる要素のひとつになると思うんです。それは大人にならないとわからないことなのですけど、でもそんなふうに子どもたちには育ってほしいなと思いますね。

園長先生

私たちの仕事は、今、目の前にいる子どもたちの成長や発達を援助することはもちろんですが、彼らが担っている未来に対して、いろいろな種をまいてあげるというのも仕事ですよね。

その中のひとつに、素敵な音楽をみんなで聴いたよねって、あのとき楽しかったよねって、という共通の思い出や、選択肢が広がったことにつながっていたら嬉しいですよね。私たちが提供してあげられることのひとつが、みんことの音楽だったらいいなと。ぜひ続けていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

なにより、コンサートが終わった時の子どもたちの笑顔をみたら、やめられないですよ(笑)

本当になににも代えがたい、子どもたちの笑顔です


毎年開催されている「みんなのコンサート」の詳細はこちら

予算の少ない施設でもコンサートを活用できる「みんなのコンサート 助成制度」の詳細はこちら


園長先生、貴重なお話をありがとうございました!

東京都中野区で開催された過去のコンサート・プログラム実施レポート(一部、文化庁事業による小学校公演等が含まれます)

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