「君は、ほんとうは、いい子なんだよ」に隠されたパワー|すべての子どもが輝く未来

私たち「みんこと」は家庭環境や教育環境などに関わらず、すべての子どもたちへ音楽を通した“本物の体験”を届ける活動をしています。

それは、五感を使い心を動かす本物の文化芸術体験は、国籍や人種、宗教、ジェンダー、そして障害の有無に関わらず、子どもの豊かな心と感性を育むと考えているから。

シリーズ「すべての子どもが輝く未来」では、多様性がキーとなる時代に生きる子どもたちを支えるヒントとなる話題を、教育学スペシャルニーズが専門のニコライ先生につづっていただきます。

Nikolai Jessen-Petersen
ニコライ・ジェッセン・ピーターソン

デンマークと日本にルーツを持ち、アメリカの大学で心理学を勉強後、教育学の修  士号を筑波大学で取得。現在はTokyo International Progressive Schoolで教員を努めながら、スペシャルニーズについての研究を続ける。

子どもに輝きを与える前向きなメッセージ

「君は、ほんとうは、いい子なんだよ」

1981年に出版された「窓ぎわのトットちゃん」。黒柳徹子さんが自身の小学校時代を描いた自叙伝的な作品です。この本を読んだ私の心に残ったのが、この「君は、ほんとうは、いい子なんだよ」というフレーズでした。

たぶん、ご存じの方が多いと思いますが、トットちゃんは小学1年生で学校を退学になり、新しく「トモエ学園」という学校に入学します。そこで、リトミックを日本ではじめて小学校の教育に取り入れた小林宗作校長先生と出会い、その校長先生のユニークな教育のもと、学校生活で繰り広げられる驚きと喜びでいっぱいの体験をしながら成長をし、学校へ行くことが好きになっていく、というストーリーです。

この本の中で最初に印象的なのが、トットちゃんがトモエ学園をはじめて訪れた日、校長先生がまず取りかかったこと。それはトットちゃんをより深く理解することです。そのために校長先生はトットちゃんの話を4時間も聞いてくれます。そして、トットちゃんをありのまま受け入れてくれる校長先生とトットちゃんの間には、すぐに信頼関係が生まれるのです。

その大好きな校長先生がトットちゃんに日常的に投げかける言葉が、「君は、本当はいい子なんだよ」。

信頼している校長先生からもらうこの前向きなメッセージはトットちゃんの心にエネルギーを与え、トットちゃん自身も「私はいい子」と繰り返すことで自信をつけていき、学校がどんどん好きになっていきます。

私にも同様の経験があります。現在、スペシャルニーズの学校で教員をしている私ですが、じつは小学校、中学校と私は問題を抱える子どもでした。ですがそんな私を「あなたは、本当は良い子だよ」と信じてくれる先生たちがいたのです。先生の中には私が取る行動が学校にふさわしくないと、直接伝えてくる方もいました。でも、「あなたは悪い子ではないんだよ」と、しっかりと伝えてくれる先生もいたのです。そしてその当時まだ子どもだった私には、なぜ自分には先生が望む行動が取れないのか理解はできませんでしたが、先生たちからのポジティブなメッセージとその先生たちが私を信じてくれる気持ちによって自信を持つことができ、学校へも行き続けることができたのです。

だからトットちゃんにとっても、私にとっても、そしていま、さまざまな理由から自信がなく輝けない子どもたちにとっても、このトモエ学園の校長先生がトットちゃんに伝えたようなシンプルでも力強い「君は、本当はいい子である」というメッセージはとても大切だと思うのです。

事実、子どもたちはみんな「いい子」です。そして、いつかきっと望ましい行動が取れるようになれるのです。でも、その日が来るまでは、たとえば先生からの、もしくは友だちからの前向きな言葉が影響力を持つ。子どもたちはその言葉によって自分を信じることができるようになると私は思っています。

ありのままを受け入れて

学校には生まれつき発達に凸凹があり、通常クラスで学校生活を送ることが難しい子どもたちがいます。なかには、たとえば、忘れ物をたくさんしたり、時間を守ることが難しい子どももいます。そしてその子どもたちは良い子になろうと一生懸命になるばかりに、結果的に、失敗を繰り返してしまうことがあります。また、多動気味なことから、まわりの人には集中していない印象を与えることも。でもじつは、彼らはたくさんのことを同時に気にかけ過ぎて、そのことで集中していないように見えることもあるのです。

そしてそんな子どもたちの多くが「ちゃんと聞きなさい!」「集中してなかったの?」という否定的な言葉を受け取りがちです。でもきっと、トットちゃんが通っていたトモエ学園の小林校長先生のように、子どもたちをありのまま受け入れ、子どもたちが取った行動の背景を考え、前を向いて進めるような言葉がけをすることができれば、その子どもたちには自信が生まれ、上手にやっていける子どもに成長するのではないだろか、と私は考えています。

教育者として私もまだまだ試行錯誤をしながらですが、子どもたちが日々たくさんの体験をしていく過程で前向きになれる言葉をたくさんかけてあげたい、そして、喜びに満ちた毎日を過ごして輝いてほしいと思いながら、毎日子どもたちとの時間を大切にしています。

みんなのことばでは、子どもたちが五感を使って楽しみ、クラッシック音楽が体験できる「みんなのコンサート」や、小さいお子さんも安心して音楽の“本物の体験”ができる親子コンサート・イベントを行なっています。

私たちは音楽の体験で生まれるコミュニケーションを大切にしています。子どもたちの自由な反応を引き出し、アイコンタクトで共感し、演奏で応える。そんな心の交流がたくさん生まれるコンサートを目指しています。

この記事を書いたのは…

パイプ なこ 
モノづくりを軸に、編集・ライターの仕事をしています。
音楽を通して子どもたちが自由に表現できる世界が広がって欲しい!という思いで、2022年からみんことの仲間になりました。
いつもイギリス人の夫・息子と一緒に、音楽、写真、イラストなどなどを楽しんでいます。

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