長年にわたり、みんなのことばをご利用いただいている幼稚園や保育園、学校の先生方にお話をうかがう「先生インタビューシリーズ」。第3回は、区立 沼袋保育園(東京都中野区)の園長・滝瀬恭子先生をお訪ねしました。
滝瀬先生は、10年以上前からご自身がいらっしゃる区立保育園で「みんなのコンサート 助成制度」を活用して、コンサートを開催されています。ご自身の園だけではなく、近隣の小規模保育園から私立幼稚園まで、年長さんと小学校1年生をご招待しておこなうスタイルが特徴です。
なぜ近隣園をご招待して開催するのか、保幼小連携にみんなのことばができること、活動に期待することなど、前後編でお届けします。
みんこととの出会い~やっぱり本物ってすごい~
みんこととの出会いについてお聞かせください。きっかけはどのようなことだったのでしょうか?
もともと、子どもたちに本物に触れる機会を年1回でもいいから作りたいと思って、タウン誌で演奏家さんを探したり、お友達にご紹介いただいたりしていました。
子どもたちは、みな素敵な感性を持っています。でも、さまざまなやり方や、こんなのどう?といった選択肢を提供できると、彼らはいろいろなものを見つけていくんですよね。なので、ぜひ本物を1年に1回でもいいから聴かせてあげたいという思いが、ライフワーク的にありました。
ある日「こんなの見つけたんですけど」って副園長が「みんなのコンサート」のチラシを持って来てくれまして、目にするなり飛びつきました!早速コンタクトを取らせていただいたら、中野区でまだコンサートをやったことはないし、ぜひやりましょうって言ってくださったのが、1回目です。たぶんそれが13年前です。
子どもたちは本物ってやっぱり感じるようですね。
「いいですか?みなさん今日は本物ですよ?」って言わなくても、どんなに小さなお子さんでもちゃんとわかる。それってやっぱり感性だと思うんです。
1回目のコンサートの印象はいかがでしたか?
子どもたちの引き込み方がすごいなと、さすがプロだなと思いました。
管弦楽に触れること自体が初めての子どもたちが、ほとんどだったかもしれません。それでもひとつひとつの音に引き込まれていくわけですね。当時の保育園は産休あけ、57日目からの赤ちゃんもいたのですが、その赤ちゃんたちも、演奏が始まった途端に「なんなの?」という反応が伝わってきて、熱心に聞いているのがわかり、本当にうれしかったです。
「みんなのコンサート」が子どもたちの輪の中心に
このコンサートをしていただく理由はもうひとつあります。
1回目は勤務していた保育園の子どもたちだけが対象でしたが、その翌年には「ほんとに良いから!」と、交流していた私立園さんにお声がけしました。複数の保育園の年長さんと小1の児童たちが合同で参加するという取組みです。保育園の子どもたちは、例えば今年、この園の22人いる年長の子どもたちが、7つもの小学校に分かれて就学します。
保育園の子どもたちは長いこと一緒にいるので、なんとなくでもわかり合えたりすることができます。ちょっとだけ失敗したりとか、うまくいかなかった時も「大丈夫だよ」という空気がクラスの中にあるんです。苦手なことに自然に手を貸したり、君ってそうだよねとわかりあえる、それが保育園の素晴らしいところなのですが、7つの小学校にバラバラに行くとなると、ひとりで就学するケースも出てきます。
コンサートを経て、それぞれの学校へ行った先々で「あ!知ってる知ってる、ねえこの間一緒にヴァイオリン聞いたよね?」という共通項があると心強いのです。
「そうそう南台小学校でやったよね」という子どもたちが増えていったら、子どもたちの輪の真ん中にみんことさんがいてくれて、そのまわりに、就学するこどもたちの「あのとき楽しかったよね」という輪が自然に広がっていくんじゃないか、というのが狙いです。
実際に、就学前検診でお互い手を振り合って、名前はわからないけれど「あー!」って顔を見合わせるんです。「誰なの?」ってママが聞くと「保育園のコンサートに来た子だよ」、「コンサート聞いてね、そのあとドッジボールしたんだ」なんていう話をするわけですよ(笑)
就学前からそんなことがあり、親御さん同志も会釈なんかして心強くなってよかったというご意見もいただいて、背中を押された気持ちになりました。
地域の横のつながりと、年長さんと小1生の縦のつながり、両方で広がっていくわけですね。
そのつなぎ目に、みんことさんがいてくださるって感じです。
コンサートを軸に近隣住民にも広がる、つながりの輪
近隣にお住いの方々にもコンサートへお越しいただいていますね。
はい、子育て支援のひとつですね。子育て中のママは、困った時はGoogleで検索できるのは便利なのですが、かえって迷ってしまうこともあるようです。そんな時、ちょっと保育園に寄っていただいて、ノウハウを持っている専門職が応援できるということが浸透していくといいなと思うんです。困った時に保育園の前に来られてピンポンしていただけたら、ママたちの力になれるんじゃないかと。
コンサートならピンポンしなくても、大手を振って入れるじゃないですか(笑)
一度入って来られたら、「どうだった?」「よかったー」「またおいでね」そんな会話をするだけで、次に訪ねてくるときに敷居が下がりますよね。
みんことさんのコンサートは、「泣いても笑っても手拍子しても全部OK!ママたちも一緒に楽しむのが一番の目的だから一緒にきてね」と言える。「シーっ」(静かに)とか、泣いてしまったらすみません、などと心配しなくてもいい。
そういう面でもみんことさんに力をいっぱい貸していただいていて感謝しています!
毎年開催されている「みんなのコンサート」の詳細はこちら
予算の少ない施設でもコンサートを活用できる「みんなのコンサート 助成制度」の詳細はこちら
園長先生、貴重なお話をありがとうございました。
次回の後編では、子どもの感性の成長のために大人ができること、コロナ禍を経た今後の取り組みについてうかがいます。どうぞお楽しみに!
インタビュー後編の記事を公開しました!続きをご覧ください。(2023.4.17)
東京都中野区で開催された過去のコンサート・プログラム実施レポート(一部、文化庁事業による小学校公演等が含まれます)
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