ニコライ先生に聞く、感情と体験の関係について ①|感じる心を育てる

私たち「みんこと」は小学校入学前の子どもたちに、音楽を通した“本物の体験”を届ける活動をしています。

それは、五感を使い心を動かす本物の文化芸術体験は、子どもの豊かな心と感性を育むと考えているから。

感性や体験の話題を中心にお届けするコラム「シリーズ 感じる心を育てる」。今回から2回にわたって、教育学スペシャルニーズが専門のニコライ先生に、感情と体験の関係についてお話をお聞きします。

Nikolai Jessen-Petersen
ニコライ・ジェッセン・ピーターソン

デンマークと日本にルーツを持ち、アメリカの大学で心理学を勉強後、教育学の修士号を筑波大学で取得。現在はTokyo International Progressive Schoolで教員を努めながら、スペシャルニーズについての研究を続ける。

体験が感情を左右する

リサ・フェルドマン・バレットの画期的な本「How Emotions Are Made(※下記参照)」で提唱されている、感情についての興味深い理論があります。それは、私たちの感情における経験の役割についてです。

とても深い内容の理論なので、単純化しすぎるリスクはありますが、基本的な考え方は経験は私たちに予測する能力を与え、その予測が日々感じている感情にもっとも影響を与えている、というものです。

たとえば、子どもがはじめて誰かと話したときのことを考えてみましょう。

その子どもは今まで話した経験がなく、でも、ある人がほかの人と話すことを怖がっている様子を見た経験があるとします。そうすると、その子どもは他人と話すことは怖いという予測をし、はじめてほかの人と話すことに対して、恐怖の感情を抱きます。

それとは反対に、誰かに話す経験を楽しんでいる人を見た子どもがいたらどうでしょうか。その光景を見た子どもは、この経験に基づいて、先ほどの他人と話すことを怖がる子どもとは別の予測をし、恐怖ではなく興奮の感情を持つでしょう。

では、この理論をもとに、私たちが子育てを通して子どもに接するとき、もしくは、教えるとき、どんなことをしたらよいのでしょうか。

それは、子どもにたくさんの経験をさせることです。なぜなら、経験の数が多ければ多いほど子どもの世界観は広がり、予測の量が増えます。そして、その予測量が増えたことで、子どもが感じる可能性のある感情の範囲が増えるからです。

この続きは次回、子どもたちの世界観を広げるために、私たちができることについて、でお届けします。

お楽しみに!

参考文献:リサ・フェルドマン・バレット(Lisa Feldman Barrett) (著)、How Emotions Are Made、2017年

みんなのことばでは、子どもたちが五感を使って楽しみ、クラッシック音楽が体験できる「みんなのコンサート」や、小さいお子さんも安心して音楽の“本物の体験”ができる親子コンサート・イベントを行なっています。

この記事を書いたのは…

パイプ なこ 
モノづくりを軸に、編集・ライターの仕事をしています。
音楽を通して子どもたちが自由に表現できる世界が広がって欲しい!という思いで、2022年からみんことの仲間になりました。
いつもイギリス人の夫・息子と一緒に、音楽、写真、イラストなどなどを楽しんでいます。

参加型クラシックプログラムについて詳しく知りたい方は
幼稚園・保育園・親子イベントにコンサートを呼びたい方は

みんなのことばは、プロの音楽家とともに、参加型クラシックプログラムを通して子どもの心を育てる活動をするNPO法人です。

あなたのご寄付・ご支援によって、もっと多くの子どもに音楽が届きます

お問い合わせは

NPO法人みんなのことば
電話:03-3770-4266(平日10:00~18:00)

アイコンクリックしていただくと共有できます