私たち「みんこと」は小学校入学前の子どもたちに、音楽を通した“本物の体験”を届ける活動をしています。
それは、五感を使い心を動かす本物の文化芸術体験は、子どもの豊かな心と感性を育むと考えているから。
感性や体験などをキーワードにお送りしているコラム「シリーズ 感じる心を育てる」。
2回にわたり、教育学とスペシャルニーズが専門のニコライ先生に、感情と体験の関係についてお話をお聞きしています。
▼1回目のコラムはこちら!
ニコライ先生に聞く、感情と体験の関係について ①|感じる心を育てる|NPOみんなのことば
Nikolai Jessen-Petersen
ニコライ・ジェッセン・ピーターソン
デンマークと日本にルーツを持ち、アメリカの大学で心理学を勉強後、教育学の修士号を筑波大学で取得。現在はTokyo International Progressive Schoolで教員を努めながら、スペシャルニーズについての研究を続ける。
体験と大人の役割
前回は、リサ・フェルドマン・バレットの本「How Emotions Are Made(※下記参照)」で提唱されている感情についての興味深い理論について、そして、体験が私たちに予測する能力を与え、その予測が日々の感じている感情に影響を与えていることをお話ししました。
では、この理論を子育てや教育現場では、どのように取り入れることができるでしょうか。
ひとつ考えられることは、子どもたちにできる限り幅広い体験をさせてあげる、ということです。
さまざまな体験をすることで、子どもたちは世界観を広げ、そこから多種な予測量を増やしていき、感じる可能性のある感情の範囲も増やしていくからです。
また、体験の幅を広げるときに、少しリスクをともなってでも、子どもたちが新しい冒険をしてみることを、大人である私たちが後押ししてあげることも大切です。
新しい経験は、かならず新しい予測につながり、子どもたちの感情の幅を広げ、結果的にさまざまな心の基準を育ててくれるでしょう。
日々の子どもとのつながりを考えて
アメリカの小説家であり詩人でもあるジェームス・ボールドウィンの言葉に「子どもは耳を傾けるのは苦手でも、まねはかならずできる」というものがあります。
前回もお話しましたが、感情と体験の理論を考えたとき、親や先生が何かを恐れたり、心配そうにしているのを子どもが見た場合には、それがその子どもの体験として世界観に加えられ、次に同じような状況に遭遇したときに、子どもの予測に影響を与える可能性があります。
また、子どもたちは自分がしたことに対しての大人の対応から、「私がこの行動を取れば、この結果になる」という予測も、彼らの世界観に追加します。
これらのことは子どもの大きな成長にもつながりますが、ネガティブな力になることも。
ですから、子どもの世界観と予測の範囲を広げる中で起こり得るさまざまなシナリオを考え、大人が適切な対応を取るよう心がけることも、子育てや教育現場で大切なことのひとつでしょう。
忙しい日々の生活の中、なかなか難しいことだとは思いますが、大人である私たちは、体験から得る予測が子どもたちの感情の成り立ちに大きな影響力を持つことを忘れずに、子どもたちと触れ合うことができると良いですね。
参考文献:リサ・フェルドマン・バレット(Lisa Feldman Barrett) (著)、How Emotions Are Made、2017年
みんなのことばでは、子どもたちが五感を使って楽しみ、クラッシック音楽が体験できる「みんなのコンサート」や、小さいお子さんも安心して音楽の“本物の体験”ができる親子コンサート・イベントを行なっています。
この記事を書いたのは…
パイプ なこ
モノづくりを軸に、編集・ライターの仕事をしています。
音楽を通して子どもたちが自由に表現できる世界が広がって欲しい!という思いで、2022年からみんことの仲間になりました。
いつもイギリス人の夫・息子と一緒に、音楽、写真、イラストなどなどを楽しんでいます。
みんなのことばは、プロの音楽家とともに、参加型クラシックプログラムを通して子どもの心を育てる活動をするNPO法人です。
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