音楽でできる“本物の体験”とは(前編)|体験活動でできること

私たち「みんこと」は、音楽で子どもの心を育てる活動をするNPO法人です。
幼稚園・保育園等で、参加型クラシックコンサートや生演奏を使った音楽プログラムをお届けしています。

また、無料や低料金の親子コンサートも開催しています。

なぜこの活動を続けているか。
その理由は、心を育てる“本物の体験”の機会を、すべての子どもたちに提供することが、大人のひとつの務めであると考えているからです。

幼児教育における「体験活動」

子どもにとって「体験活動」は大切です。

いろいろな体験活動がありますが、その中でも最もポピュラーな“本物の体験”といえば、自然体験。

幼稚園教育要領(文部科学省)/保育所保育指針(厚生労働省)には、「環境」の領域において、まったく同じ“自然体験”に関する文があります。

幼児期において自然のもつ意味は大きく、自然の大きさ、美しさ、不思議さなどに直接触れる体験を通して、子ども(※)の心が安らぎ、豊かな感情、好奇心、思考力、表現力の基礎が培われることを踏まえ、子ども(※)が自然との関わりを深めることができるよう工夫すること。

※幼稚園教育要領では、「子ども」は「幼児」と表記されている。

この文で私が注目するのは、自然体験を通して
“子どもの心が安らぎ、豊かな感情、好奇心、思考力、表現力の基礎が培われる”
とされている点です。

また、同時に「表現」の領域においては、

豊かな感性は,自然などの(※)身近な環境と十分にかかわる中で美しいもの,優れたもの,心を動かす出来事などに出会い,そこから得た感動を他の幼児や教師と共有し,様々に表現することなどを通して養われるようにすること。

※保育所保育指針には「自然などの」の表記はない。

との記述があります。

どちらも「体験」「豊かな感性を育てる」に共通するキーワードとして「自然」があげられていますが、これはなぜでしょうか。

自然体験でできること

「体験」で大切なこと、「自然」を通してできることに、以下の3つのポイントが挙げられます。

  • 五感を使うことができる
  • 自由に表現できる
  • 共感を得たり、仲間と共有することができる

ひとつずつ、解説します。

1. 五感を使うことができる

まずひとつは、五感を使うこと。

たとえば、海ではこんなふうに。

  • 目の前で広い海、波、貝や生き物などを見ることができる(視覚)
  • 足の裏で砂浜を感じ、海水の温度などを感じることができる(触覚)
  • 海水の動きを見ながら、波の音を聴くことができる(聴覚)
  • 潮の香りを感じる(嗅覚)
  • 口に入った海水は、しょっぱい!(味覚)

五感すべてのインプットがリンクし合い、ひとつの「体験」となります

要領・指針では「環境」の領域にある、
“自然の大きさ、美しさ、不思議さなどに直接触れる体験”
であり、「表現」の領域にある、
“美しいもの,優れたもの,心を動かす出来事など”との出会いがまさに、五感を使う体験です。

2. 自由に表現できる

上の例で取り上げたように、海ひとつの体験でも、感じることは人それぞれ。

なにをどのように感じるべき、といった正解はありません。

「海って冷たい!」もOK。
「広い海が怖い」もOK。
「きれいな貝を見つけて拾いたい」もOK。
「波打ち際で足が砂に埋もれていく感覚が大好きでずっとそこに立っている」もOK(私です)。

すべての反応に、正解・不正解はありません

幼児期は、反応=表現

それぞれが自由に反応・表現できるのも、自然の懐の深さかもしれませんね。

3. 共感を得たり、仲間と共有することができる

要領・指針の「表現」の領域では、
体験から得た“感動を他の幼児や教師と共有し、様々に表現することなどを通して”豊かな感性が育まれる
とされています。

五感を使って自然に触れ、自由に反応し、表現する。
それを、誰かと一緒に体験することで「ほんとだ!」という共感を得たり、共有することが、感性を豊かにするのです

海に入り、「つめたーい!」と言うと、
おともだちが隣で「ほんとだー!きもちーい!」と言うかもしれない。

そして、もっと、自分の感じていることを相手に伝えようとしたり、相手の表現を受け入れたり、受け入れられなかったり、するかもしれない。

そうして体験はお友だちと私、2人のものになるのです。

自然体験と同じことを、コンサートでもできる?!

これまでのことをふまえてお伝えしたいのは…
みんことのコンサートでも、自然体験と同じことができるんだよ!
ということ。

しかも、出かけなくていい。
いつもの場所で、いつもの仲間と、です。

でも、長くなってしまうので、この続きは次回。

今日は、子どもにとっての「体験活動」の大切さを、自然体験を例にお伝えしました。

命は大切。
でも、“念のため”の中止や延期により、大切な幼児期の体験活動の機会を失うことの大きさを、大人はしっかりとわかっているべきだと考えています。

この記事を書いたのは…

渡邊 悠子(わたなべ ゆうこ) 
NPO法人みんなのことば代表理事。心を育てる“本物の体験”をすべての子どもたちに!との思いで、2009年に法人を設立。生演奏と子どもたちの反応を全身で感じられる、みんことの活動現場に行くことが大好き。コロナ禍での育児を経て、活動への思いを強くしています。家では、ペットの小さなトカゲがお気に入り。

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