代表・渡邊悠子/みんことメンバー深掘りインタビュー

みんことアーティストの「ゆうきおにいさん」こと小倉勇樹がインタビュアーとなり、みんことのメンバーにインタビューをする企画の第7回。今回は、みんことの設立記念日に配信されました。


1人でも多くの子どもに“本物の体験”を

今日、3月18日は「みんこと」の誕生日です。皆さまのご支援のお陰で12歳になりました!

という訳で今月のワタクシ、ヴァイオリン&ヴィオラの「ゆうきおにいさん」こと小倉勇樹がお届けする、今月の「みんことメンバー深掘り(!?)インタビュー」は特別編!渡邊悠子代表です!

小倉

悠子さん、「みんこと」も12歳ですね。

渡邊

12年かぁ…早いですね。12年前の今日、3月18日は「NPO法人みんなのことば」が設立された日です。偶然なんだけれどみぞくん(アートマネージャーのヨコミゾヒロユキ)のお誕生日と一緒。なので二重におめでたい日ですね。

小倉

まずは設立に至るまでのことを少し伺いたいなと。学生時代からすでに「社長」をやっていたと聞きました。

渡邊

そうなんです。私が大学に通っていた頃はいわゆる「就職氷河期」と言われていた時期で、先輩の中には就職出来てない人もいたのです。「大卒だけでは就職出来ないんだ、マズいなぁ…私は就職したいな、いや、ちゃんと名が知れてるところに就職したい(笑)」と気付き、どこかで実務経験を積もうと考えました。

その頃いくつかのベンチャー企業が学生向けにインターンシップの受け入れをやっていたのですが、その中から音楽家の演奏派遣をしている会社をたまたま見つけて「音楽好きだしなんだか面白そう」とその会社に入りました。するととても仕事が楽しくて!ベンチャーだから社員さんと同じように、もしかして社員さん以上に働いたかも(笑)。

そうすると学生でも結果が出てくるものなのです。元々は3ヶ月位で辞めて就活しようと考えていたのですが、楽しくて1年位経っていました。そんなある日、社長が社員を集め「私、違うビジネスを始めようと思うのだけど、私の代わりにこの会社やりたい人いる?」と。いい加減就活しないとなー、と思っていた頃だったけれど「私、ここで手をあげたら社長になれるの?」と思って…

小倉

まさか…(笑)!?

渡邊

怖いもの知らずで手をあげちゃった(笑)

大学3年生の時でした。でもインターンの学生がいきなりトップになってしまったので、会社はうまくいかない訳ですよ。だから数ヶ月のうちに元々いた社員さんたちはみんな辞めてしまって、私独りぼっちになっちゃって。でもそこから新たに学生さんに来てもらったり、色々な人に手を借りたりして助けてもらいながら、1年半くらいで売上利益を引き継いだときより成長させることが出来ました。

小倉

さすが!でも1人になってしまった時に辞めようとは思わなかったんですか?

渡邊

もう引き継いじゃったから「私はこれをやるしかない」という思いでした。元々音楽が好きだったし、会社って生きている、お客様もいるし、常に動いているんですね。もう本当に必死になっていたからあまり記憶が無いのだけど(笑)

小倉

元々音楽が好きとのことですが、小さい頃から何か楽器を弾いていたのですか?

渡邊

小さい頃は習い事でピアノをやっていただけで、小学校で合唱の伴奏をしたりはしていました。全然上手じゃないんだけどね(笑)

小学校1年の頃に家にアメリカの大学生のお姉さんが2週間ホームステイに来たことがあったのです。当時の私には日本語とは別の英語というものがある、ということは何となく分かっていたので、その大学生に家の説明や妹の紹介をしたり、頑張って一生懸命英語で話したつもりだったんです。でもひと通り話したあとで彼女が、両手を上にあげてちょっと肩もあげて首を横に降る「全然わかんない!What ?」のポーズをしたの(笑)。「こんなに一生懸命話したのにどういうこと?」ってものすごくショックでした。

ここから違う言葉や他の国の人とコミュニケーションを取るということにとても興味がわいたのです。それで高校生のときに1年間アメリカに留学して、そこで合唱の授業をとったのです。ピアノを弾いていたこともあり伴奏をさせてもらって、みんなと練習していく中で友達が出来たので「音楽が好きで良かったな」とか「楽器が出来るってすごいな」と感じました。私、英語はそんなに得意じゃなくて、こんなに言葉が下手っぴで思うようにコミュニケーションがとれなくても音楽で仲良くなれるんだ、ということを肌で感じたのです。小さい頃の体験がどういう形になって花開くか分からないけれど、人がその後の人生をどう歩んでいくか、興味を持つか、人間の形成にとても大きな関わりがあると感じている所なんです。

小倉

それが悠子さんの原体験なんですね。それで子どもたちに?

渡邊

前の会社時代に、時々子ども向けのコンサートをやっていました。そのときの子どもたちの素直な反応がとても嬉しくて!いきなり歌ったり踊り出したり。それで子どもたちにもっとコンサートを届けられないかなと沢山の幼稚園、保育園に相談しました。

でも幼稚園や保育園にはコンサート用の予算が全く無いんです。ボランティアだったら来てもらっています、とか、そんな予算はありません、という所ばかりでした。「子どもたちに届けたい」強い思いはあれど、ビジネスにはならない…そんなモヤモヤをその頃色々な方に話していたら、ある社長さんに「やってみたら?親子コンサート。スポンサーになるよ」と助け舟を出して頂きました。それで入場料無料の親子コンサートを開催したのです。そしたらあっという間に紀尾井ホールの800席が満席に。あれだけ断られたのに、無料ならみんな来たいんだなと驚きました。

それでこういう形の事業をもっと出来ないかな、と考えるようになりました。もちろん有料でも来てくれる人はいらっしゃいますが、無料だったらそれまでコンサートを選択肢にも入れなかった人たちも「体験させてみよう、行ってみよう」という気持ちになるかもしれないですよね。そしたらより多くの子どもたちが体験出来るようになるし、より多くの子どもたちに音楽を届けることが出来るから、無料だったり低価格で出来るような仕組みを作れないかなと考え始めて…それをやるならNPOだなと。

さあ、いよいよ「みんこと」設立のときが近づいてまいります。

渡邊

その頃、たまたま新聞でコロンビアのウリベ大統領が、治安改善策の1つに新たに音楽学校や音楽学部を2年間で200開設するという政策を掲げた記事を見ました。当時のコロンビアはとても治安が悪い国でした。その政策のスローガンは「楽器を手にする子は武器を手にしない」。それを読んだ時「はっ」としました。アメリカでの体験を思い出し、確かに楽器があれば、音楽があれば肌の色や目の色が違っていてもいきなり殺し合おうとは思わないし、みんなが音楽を好きという気持ちを持っていることは、とても大切なことだと。極端かもしれないけれど、みんなで音楽を奏でれば世界から戦争はなくなるかもしれないし、平和に繋がっていく。音楽は言語を超えたコミュニケーションツールであるし、小さい頃から音楽を体験をして「私、音楽が好きだな」という気持ちを知らず知らずのうちに持つ子どもたちが沢山いるほうが、必ず良い社会・良い世界になると確信したのです。「私は絶対子どもたちに音楽を届けるぞ!」という気持ちを大統領のその言葉で背中を押してもらった感じです。それで前の会社は辞めて、「みんこと」を立ち上げました。

小倉

なるほど!だから音楽を届けているのに「みんなのことば」なんですね。そして「みんこと」のアーティストは全員プロの音楽家、前述の予算等のお話があったにも関わらず何故プロの音楽家に?

渡邊

子どもたちの心を育てる“本物の体験”を届けたいからです。

たしかに、活動のコストを抑えるため、また幅広い人が活動に関われるようにアマチュアの音楽家さんや、ボランティアをやりたいという方々で活動を推進したほうが良いのでは、と言われることがあります。でも私たちが届けたいのは「演奏」とか「音楽」だけではなく「心を育てる体験」で、しかも、それを継続的に、数を増やしていきたいと考えています。

演奏が上手なのは当たり前。その上で「みんこと」の理念に共感し、子どもたちに毎回最高のパフォーマンスを届けてくれるか。その挑戦をともにし続けてくれるのは、プロの音楽家しかいないと思います。しかも、プロなら誰でもOKではなく、ともに挑戦し続けてくれるか、選考をして、研修もさせていただいています。演奏できれば誰でも「みんこと」のアーティストになれるわけではないので、そこは活動を成長させていくにあたってハードルを作ってしまったなぁと感じることもありますが(笑)。だからこそ、子どもたちの感性や表現を引き出すことができるし、先生たちや保護者の満足度がありがたいことに非常に高く出ているのだと思います。

小倉

そしてあっという間の12年。悠子さんも「ママ」になられて…

渡邊

子どもたちに対する思いは全然変わっていないです。ただ、子どもたちにはみんな親や保護者がいるわけで、その方々の気持ちがよくわかるようになりました。

小倉

最後、今後20年30年と続けていく「みんこと」への思いをお願いします。

渡邊

コロナ禍で強く感じたことは「子どもたちの体験が減ったこと」への危機感です。体験というのはオンラインではなかなか出来ません。特に未就学児は1年経ったら別人のように成長します。一日一日何を体験するか、がその後の人生を作っていくとても大切な時期です。そのために私たちは「五感を使う本物の体験」をコロナであろうが無かろうが、万全の対策をして子どもたちに届けていきたいと思っています。そして「みんこと」は「全ての子どもたちが当たり前のようにこういったコンサートを体験出来る社会にしたい」と思っています。体験なら何でも良い訳ではなく、ただクラシックコンサートを届ければ良い訳ではなく「もっと子どもたちがワクワクドキドキする機会」を提供したい。色々な企業さんと連携したり他の団体さんと協力したりして「1人でも多くの子どもたちに本物の体験を届ける」ためにチャレンジし続けていきたいと思っています。

皆様、代表の熱き思い、いかがでしたか?僕は改めてもっともっと「みんこと」が好きになりました。悠子さん、これからもよろしくお願い致します。

今日は「みんこと」の誕生日、是非みなさんお家で「うち×うた」して下さい。いきますよ~。

♪Happy birthday to you Happy birthday to you Happy birthday dear みんこと&ひろゆきおにいさん Happy birthday to you♪

次回の深掘りインタビューは、4/20配信予定。次回もお楽しみに。

このコーナーへのご意見、ご感想、リクエスト、アーティストに聞いてみたいことなどなど、どしどしお寄せ頂けると嬉しいです!(hello@minkoto.org)

(文・構成:小倉勇樹)


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